NARC通信 第11号

NARC通信 第11号

平成17年8月12日発行

  

NARC通信第4号(平成15年10月25日発行)で足立さんが、ヴィエンチャン県の
ナムニャム村という少数民族モン族の村と、村人のチョンチャオさんがやっている養殖
のことを報告しました。足立さんがナムニャム村を訪れたのは2002年から2003年にかけて
のことでした。それから2年経って、再びナムニャム村を訪れた足立さんがチョンチャオ
さんの近況を報告してくれました。


チョンチャオさんの養殖その後

2005年8月6日(土曜日)、休日を利用して、ヴィエンチャン県ナムニャム村を、NARC
現地世話人のボリチャンさん、メンタオ君(それにメンタオ君のガールフレンドと妹も一緒)
と訪問しました。2002年から2003年にかけて行った活動がどのようなことになっているかを見
るための追跡調査です。

調査団一行
ナムニャム村へは、2002年に養殖改善普及計画フェーズ1(AQIP-1)の活動の一環として、
ジェンダー状況調査と養殖普及活動の事例研究を行うために、養殖池を所有する4世帯へ
ティラピアやコイの稚魚を配布しました。また、2003年には、ナムスワン養殖開発センター(NADC)
で、村の養殖農民1名(チョンチャオさん)と、ナムニャム村のあるトゥーラコン郡の
郡畜水産職員1名に養殖技術研修を行いました。チョンチャオさん達は、NADCで、コイ科
の魚の親魚育成・種苗生産(ホルモン注射による産卵促進や自然採卵の方法)、魚が卵を
産みつけるための産卵巣の作り方、種苗生産用水槽の構造、ティラピアの種苗生産と育成
、等々多岐にわたる項目を約1週間で学びました。その後、NARC通信第4号で報告したように、
チョンチャオさんの池にソウギョの種苗を放流しました。

2003年には、村の裏手の山に中国とラオスが共同で発電用ダムを建設中でした。現在ダムは
完成して、チョンチャオさんの家の裏に、灌漑用水路(写真2)が引かれており、かなりの
量の水が轟音をたてて流れていました。チョンチャオさん達村人は、この灌漑用水を無料で
使うことができるそうで、彼はその水をパイプで引いて、家に流しっぱなしの水道を引き、
種苗生産用コンクリート水槽、中間育成池にも水を引いていました。この種苗生産用水槽は、
NADCで見てきたコンクリート水槽をヒントに今年、彼が自力で作り上げたものです。注水は
パイプを使って水を散布する仕組みで、排水方法はNADCと同じでした。建設費はセメント代、
パイプ代等およそ140ドルかかったそうです。正確な日付はわかりませんでしたが、今年10回
ほどコイの種苗生産をして、約3万尾の種苗(人差し指の第1関節から第2関節程度のサイズ)
を村人へ販売したそうです。ホルモン注射をして産卵させる方法も試しましたがうまくいかな
かったとのことです。また、食用サイズになった魚も村人へ販売したそうです。AQIP-1が配布
した種苗のなかには約2キロに育ったものもあり、私があげたソウギョの種苗も約2キロに育った
とのことです。これらの魚は一部を販売して、一部は親魚にするために現在も育成中だそうです。

種苗生産水槽

中間育成用の池は、乾期に干上がってしまうため、村人300〜400人を動員して堰を造りました。
そして、その上流には、チョンチャオさんが個人でコンクリートの堰を造りました。彼は養殖に
かかる経費を、裏山で伐採した木材の販売で稼ぎ出しています。しかし木材販売は、いつまで続
けられるかわかりません。そのために、村にとっても養殖という代替産業が重要になってきてい
ます。チョンチャオさんの養殖に対する積極的な姿勢は、私の目頭を熱くさせました。また、ど
ういう経緯で実現したかわかりませんが、堰をつくるために多くの村人が賛同して工事に参加し
たということ、これが自立発展性なんだろうなと考えた次第です。


ラオス点描 ***** 森からの薬 *****


私の知っているラオスの人たちはみんな薬好きです。おそらく大部分のラオス人が薬好きな
のではないでしょうか。しかし、日本の薬好きのようにサプリメントや錠剤を飲むということは
あまりしません。あるとき頭が痛いという知人に、日本で市販されている鎮痛解熱剤をわたしま
したが、疑わしい目で見て、この薬はきっと強すぎるに違いないといって飲もうとはしませんで
した。彼等が絶大な信頼を寄せているのは、工場で作られる化学薬品ではなく、森で採集される
薬草の類です。どこの市場にも、多くの種類の薬草、木の根や皮などを売っている店が必ずあり
ます。森の産物の中には、ベンゾインのように化粧品や医薬品の原料として国際市場へ輸出され
ているものもあります。もしかしたら、これから先進国の製薬会社が血眼になって獲得競争をく
りひろげるような物が見つかるかもしれません。

比較的安価で手に入れやすい「森からの薬」のひとつにチョン・バンがあります。チョン・バン
は英語でMalva nutsと呼ばれており、毎年数百キロが1キロあたり2〜3ドルで主として中国に輸出
されているようです。チョン・バンはアオギリ科のScaphium macropodumというラオス南部やベト
ナム、カンボジアに分布している熱帯樹から取れる実です。大きな木からは毎年40キロの実が収
穫できるといいます。長さ1.5センチ、幅1センチくらいの茶色の実で、からからに乾燥した状態
で売られます。チョン・バンの産地である南部のサバナケット県やチャンパサック県の市場はも
ちろんのこと、ヴィエンチャンの市場でも買うことができます。

チョン・バン

文献によるとこの実は料理や清涼飲料を作るのに使われるとのことですが、私はそのような形で
はまだ口にしたことはありません。人々は健康飲料としてチョン・バンを使っているようです。こ
の実を水に入れると、しばらくして皮が破け、なかからジェリー状のものが出てきて広がります。
そして、水が薄茶色に染まります。この水を飲み、ジェリー状のものを食べます。

水中ではじけたチョン・バン

熱が出たときや腹をこわしたときに飲むと効果があるといわれていますが、普段から飲んでい
る人も多いようです。薄茶色の水も、ジェリー状のものも味はほとんどせず、かすかに土のにお
いがする程度です。さっぱりした飲み物ですし、もしかしたら胃腸に良いのではないかと思い、
私は日本でも良く飲んでいます。しかし、今のところまだ特に薬効といったものは感じられません。
(池ノ上)