NARC通信 第22号

NARC通信 第22号

平成20年6月25日発行

  
水田生態系の生き物調査
NARCは昨年の8月から、?長尾自然環境財団からの委託業務として、ラオスで水田
生態系の生き物調査を行っています。調査対象地域は、ヴィエンチャン首都圏北部の
ナーサイトン郡内にある20村です。この地域は首都から30キロ位に位置していますの
で、多少は都市化の影響を受けていますが、まだ住民の大部分は水田稲作を中心とし
た農業に従事しています。そして、水田やそれにつながる灌漑用水路、沼地、貯水池
などでさまざまな水生生物を採取してそれを重要な食料としています。米増産のため
に化学肥料や農薬を使ったり、工場が建設されて水田や周辺の水界が失われたりすれ
ば、そのような食料が失われてしまいます。もちろん、多少の現金収入増や近代的耐
久消費財の所有を選ぶか、豊かな水田生態系から採れる食べ物を選ぶかは、住民の選
択です。しかし、水田生態系は一度失ってしまうと元に戻すことはほとんど不可能で
す。今のうちに、水田生態系にどのような動植物が生息し、住民の生活にどれだけ役
に立っているかを調べておくことが必要です。住民はその結果を考慮しながら、生態
系を維持するか、棄てるかの選択を慎重に行うことができるでしょう。

大事な動物蛋白源、水生動物

調査活動は、水生生物のリストを作ること、住民が水生生物をどのように利用してい
るかの情報を収集すること、そして住民に対して水田生態系の重要性についての啓蒙
活動を行うことを目的に行っています。水生生物は、各調査対象村の小学校の先生に
協力してもらい、週末に学童20人を集めて、学童に竹篭やすくい網で集めてもらいま
す。集めた生物はナムスワン養殖開発センター(NADC、ラオス畜水産局に所属する養
殖技術開発・研修機関)に持ち帰り、種類ごとに分けて数を数え、アルコール漬け標
本にします。標本については、?自然環境研究センターや?長尾自然環境財団の専門
家の指導を得ながら生物学的分類をして、正確な種名を明らかにします。

これらの活動は、NADCとラオス国立大学生の環境保全ボランティアグループの共同で
行っています。採集に参加した学童に対する環境保全啓蒙活動や村人に対する水生生
物の利用に関するインタビュー調査は大学生グループが主体となって行います。学生
ボランティアグループには、ラオス国立大学環境・開発研究センターの先生が指導教官
としてついています。生物採集に参加した学童には、水田環境保全の標語を刷り込ん
だT−シャツとちょっとしたスナックをご褒美としてあげたあと、大学生グループがさ
まざまな遊戯をして楽しく遊ばせ、水田環境が重要なことをやさしく説明する紙芝居
を見せます。

勢ぞろいしたブア村の小学生
生物を採集するナカ村の小学生
生物を採集するナディ村の小学生
ゲームをするホンヌア村の小学生
ソンプアイ村で紙芝居
ポンムアン村でインタビュー調査

集まった動物は、魚類が28種のほか、ゲンゴロウ(成虫と幼虫)、ヤゴ、ミズカマキ
リ、タイコウチ、カエル(オタマジャクシも)、タニシ、エビ、カニ、ヒル、小さな
ヘビ(大学の指導教官によると毒ヘビとのこと)、バッタ、コオロギ、クモなど多種
多様でした。このうちヘビ、ヒルなど少数のものを除いた、ほとんどすべての動物が
食用になっています。村によって違いはありますが、一世帯あたり、だいたい年間50〜
100回くらい採集を行い、合計40〜120キロくらいの水生生物を採集し、おかずとして
消費しているとの結果が出ています。この量は、養殖で生産したり市場から買ったり
して消費する魚の量に匹敵するくらいの量ですから、天然の水生動物が、村人の食生
活において非常に重要であることがわかります。

Esomus metalicus Parambasis siamensis
Trichopsis vittata ヤゴ
ゲンゴロウの幼虫 タイコウチ
ミズカマキリ リンゴガイ
カニ カエル
エビ コオイムシ