NARC通信 第24号

NARC通信 第24号

平成20年12月10日発行

  

ラオス農山村におけるバイオガス利用を目指す


牛の糞から燃料を
糞というものはたいていの場合、厄介者扱いされています。現代文明は、人間の糞を
いかに手際よく捨てるかについて様々な工夫をこらし、莫大な資源を消耗する糞処理
システムを作りあげるに至っています。牛の糞は肥料や燃料に使われる場合があるの
で、必ずしも厄介者扱いされてばかりいるわけではありません。しかし、ラオスでは
あまりそのような利用はされておらず、道端に転々と散乱している光景をどこでも見
かけます。厄介者ではありませんが、のけ者扱いされていると言ってよいでしょう。
ナムスワン複合養殖農場では常時12-16頭の牛を飼育しています。牛達の排泄する糞の
量はかなりのもので、日中は草を食べながら所きらわず排泄しますし、夜は牛舎の中
で排泄します。この糞を熱エネルギー源として有効利用しようというのが今回のお話です。

家畜の糞からメタンガス(バイオガス)を発生させてそれを家庭での調理や照明の熱
源にすることは、すでにあちこちで行われています。養豚廃水でバイオガスを発生さ
せるベトナムの事例は、NARC通信2号で大平智江さんに報告していただいていますし、
私もベトナム(豚糞)やネパール(水牛糞)で家畜糞を利用したバイオガス発生装置
を見ました。ラオスでもバイオガス発生装置を導入している農家があります。したがっ
て今回報告することは何ら目新しいことではありません。資源循環型を目指すナムス
ワン複合養殖農場にはこの装置の導入が有効なのではないかという考えと、日本で都
市生活をしている身にはほとんど経験することができないことに、自分自身がかかわっ
て装置作りから利用までの過程を自分の目で見てみたいという多分に個人的な欲求に
基づいてやったことです。

ラオス畜水産局はオランダのNGO、SNVの協力によって、バイオガス利用を農家に普及
するプロジェクトを実施しています。このプロジェクトは、バイオガス発生装置建設
費用の半分(100ユーロ)を支援し、技術的支援もします。しかし、ラオスでは100ユー
ロを負担できる農家はあまりいないので、バイオガス普及はそれほど進んでいないよ
うです。ナムスワン複合養殖農場が畜水産局管轄下にある施設だということもあってか、
支援申請はすんなり承認されました。

3月初旬にSNVプロジェクトから支援分としてレンガとセメントが搬入され、中旬から穴
掘りが始まりました。建設場所の土が固かったため、複合養殖農場職員のメンタオ君と
ブンニャン君が大変苦労して、直径1.5m、深さ1.5mの円形の穴を掘りました。その後、
SNVプロジェクトから職人が来て穴の内側にきれいにレンガを貼りセメントで表面を固
めて天井をはり、ガスパイプ、排水口、牛糞の投入口などを作り、土をかぶせて、バイ
オガスタンクが3月末に完成しました。発生装置だけではなく、ガス圧力計、ガスコンロ、
PVCパイプも供与されました。

4月2日に、SNVプロジェクト指導員の指導のもとで、牛糞120キロと水120リットルが注入
されました。ただ糞と水を放り込めばよいのではなく、糞をよく水に溶いて注入しなけ
ればだめだという厳しい指導があり、これがとても大変な作業でした。

2週間後にはガス圧力計の針が10kPa(キロパスカル)を指しました。ガスコンロの栓
をひねるとガスが勢いよく出てきて、点火すると青白い炎がきれいに並びました。8月に
東京国際大学国際関係学部の武石教授と学生さん4人が海外実習でラオスに来たときには、
学生さんにバイオガスを使ってカレーを作ってもらいましたが、10人分の美味しいカレー
を作ることができました。毎日10キロの牛糞を水で溶きながら投入すれば、10人分のカ
レーを毎日作ることができるガス量が得られるので、バイオガス発生装置は家庭用熱源
としていろいろ利用できます。複合農場では、バイオガスを使ってお菓子作り、ジャム
作り、魚の加工などをやってみたいものです。ラオス農山村ではバイオガスの利用がもっ
ともっと普及してもよいと思います。
ガスタンクの穴掘り


ガスタンクの壁造り


ガスタンクへの牛糞投入


バイオガスでカレーつくり