NARC通信 第3号

NARC通信 第3号

平成15年9月21日発行

  

ラオス点描---バーシーの儀式---

ラオ・ルム(低地ラオス人、主としてメコン川流域に住むラオスにおける多数民族)
は、送別会、壮行会、結婚式、新年などいろいろな機会にバーシーという儀式を行い
ます。この儀式は仏教儀式ではなくアニミズム起源の儀式です。したがってお坊さん
はよびません。
まず星占いでバーシーを行うのに適した日と時間が決められます。バナナの葉を円錐
形に巻いてその周りにマリゴールドなどの花を飾ったパクアンという物が式場の中心
に据えられます。パクアンのてっぺんや周囲には白い紐をかけた竹ひごが突き刺して
あります。パクアンは米を敷いた銀色の器の上に立てられており、その周りには酒、
蒸したニワトリ、米、卵などが供えられます。パクアンを取り巻いて人々が座ると、
長老というような顔をした人がパーリ語とラオス語のまじったお祈りをします。人々
はパクアンのてっぺんにつながった白い紐を手に挟んでお祈りします。お祈りと供物
によって、人間の身体からバラバラに飛び出してしまったいろいろな魂を呼び集める
のがバーシーの本来の意味だそうです。
お祈りが終わると米を皆の頭上にばらまき、白い紐をお互いの手首に結びあいます。
その時に、結ぶ側が結ばれる側にお祝いや励ましや安全を祈る言葉をかけます。ひと
わたり紐結びが終わると、あとはたいていの場合ラオラオと呼ばれるもち米から作っ
た蒸留酒を飲んだりビールを飲んだりの大騒ぎになります。

バーシーを行うのはラオ・ルムだけではなく、ラオ・スン(高地ラオス人)と呼ばれ
る少数民族のモン族も新年にバーシー(モン語で何と呼ぶかは知りませんが)を行う
ことを知りました。勝手な想像ですが、比較的低地に近いところに住むモン族が、ラ
オ・ルムの影響を受けてバーシーをやるようになったのではないでしょうか。

モン族のバーシーはラオ・ルムのそれとはだいぶ様子が違います。バナナの葉で作っ
たパクアンはありません。ニワトリを丸ごと蒸したのをホーロー引きの器に何匹か入
れたのと白い紐を重ねて長老がお祈りをします。そのあと、居合わせた長老が何人か
集まり、ニワトリをいじくりまわしたりひっくり返したりして、内臓や骨の様子など
から吉兆占いをします。そして主賓がニワトリを拝み、皆で主賓の手首に白い紐を結
びます。紐を結ばれるのは主賓だけです。それが済むと何人かの男が客に順々にラオ
ラオをついでまわり、やはり大騒ぎになります。

ラオ族の結婚式のバーシー

モン族の正月のバーシー


ラオスへの古着送付記録

多くの方々のご協力により、今年の2月以降8箱(合計58.6kg、約200枚)の古着をラ
オスに送ることができました。現地では古着をNARC研修員のボリチャン・リープサイ
さんが販売しており、売れ行きは好調という報告が来ています。NARC通信第1号でお
伝えしたように、売上げ金は彼女の収入、ナムスワン養殖開発センター職員組合の活
動資金、NARC現地活動積立金に振り分けられています。販売価格はT-シャツが日本円
で60円くらいで、現地の人々に良質の衣類を安く提供するという目的も果たしています。
発送年月日重量
1平成15年 2月27日8.035kg
2平成15年 3月24日11.270kg
3平成15年 4月30日4.095kg
4平成15年 5月 7日10.800kg
5平成15年 5月13日5.850kg
6平成15年 6月30日7.565kg
7平成15年 8月26日4.385kg
8平成15年9月 2日6.595kg
合計58.595kg

NARC勉強会

9月11日にジェンダー研究部会の勉強会を轄総ロ水産技術開発で開きました。前回に引
き続き Townsley, P. 1993. A Manual on Rapid Appraisal Methods for Coastal Communities.
Bay of Bengal Programme. 109p. を読みながら議論し、そのあと「自給的養殖はいかなる条件下で持続的たり得るか」とい
うテーマについて雑談形式で考えを出し合いました。出席者は11名でした。

Rapid Appraisal(RA)についての議論
RAの手法に含まれる直接観察(direct observation)とsemi-structured interviewに関
するを読みながら次のような点が議論されました。
(1)マニュアルに述べられている直接観察項目のリストはきわめて常識的なものであり、我
々がこれまで行ってきた調査においても観察してきた項目である。RAではさらに、観察結
果を他のチームメンバーとクロスチェックし、検討し、まとめて、チーム全体で情報を共
有することを求めており、これは重要なことである。しかし、直接観察によって正確かつ
有益な情報を得るためには充分な経験の積み重ねが必要であろう。

(2)semi-structured interviewについての説明では、対象地域の習慣やしきたりをふまえ
て節度をもって振る舞うこと、インタビューの場所と時間を適切に選ぶべきこと、相手を
萎縮させたり退屈させたりしないよう工夫をこらすべきこと、あらかじめ想定した回答を
誘導するような質問はしないこと、などいろいろな注意事項が述べられている。これらの
注意事項も当たり前のことばかりである。しかし、限られた時間、人数、予算のもとで、
現地語ができない外国人が対象地域でインタビューをすることを考えると、言うは易いが
行うは難いことばかりである。

(3)このマニュアルは現場における実用性という面ではあまりみるべきものがないが、我々
が現場調査を行うにあたってどのようなことに注意を払うべきかを考える場合に、頭の隅に
入れておけば役に立つものであろう。

自給的養殖に関する議論
(1)自給的養殖を可能にする要素
-食糧安全保障(養殖が行われて食糧確保手段が多様化すれば食糧不足の危険が分散する)。
-仏教的道徳観(カンボジアで聞いた、生き物を飼育することによって徳を積むことができる
という考え)。
-ステータスシンボル(来客があった時などに充分な魚を料理して歓待することによって自分
の社会的地位を誇示することができる)。
-居住環境保全(養殖の導入によって生活廃棄物を魚の餌として利用するなど循環型生産が可
能になる)。
-家族や共同体の求心力強化(養殖の導入によって自立的で安心感のある生産・生活環境を形
成できれば家族や共同体の絆が強まる)。
-食糧生産の効率化(養殖の導入によって動物蛋白源を確保するための労働、時間などが節約
できる)。

(2)自給的養殖が成立するのに必要な条件
-給水条件などの適切な自然条件がある。
-養殖を行うための労働力が確保できる。
-投入(資金、労働力、時間)を最小限におさえることのできるような養殖技術が使える。
-草食性、雑食性の養殖対象魚が入手できる。
-モノカルチャーではない多様な生産活動が行われている。

(3)自給的養殖普及に必要な配慮
-環境からの収奪を最小限にとどめる。
-意志決定、労働、生産物の配分・処理におけるジェンダーの状況。
-水産物という保存しにくい生産物の適切な処分方法(直接自家消費、加工・保存、販売の比率)。
-社会・経済環境の時間的変化への対応(要素や条件によって変化の早さが異なることへの留意)。
-自給的養殖から現金収入指向的養殖へ移行した場合のインパクト評価。

このテーマは農山漁村における養殖を考える場合に重要な、永遠のテーマともいえるものなの
で、今後の勉強会でも雑談会のテーマにしたいと思います。