NARC通信 第4号

NARC通信 第4号

平成15年10月25日発行

  

NARCの組織について

NARCの活動を開始して半年以上が経過しました。何人もの方々が古着の収集・送
付、勉強会への参加、寄付、などの形で協力してくださいました。また「NARC通信」
を読んで感想を寄せてくださる方もあります。すでに何人もの方々のエネルギーがNARC
に注がれています。NARCの設立趣旨や活動内容はすでにパンフレットで述べましたの
で、ここでは組織形態について述べさせていただきます。

NARCは会費も権利も義務もないネットワーク(連絡網)です。あまりに空想的だと思
われるかもしれませんが、いずれはこのネットワークにアジア農山漁村の人々も入っ
てきてもらうという想定です。NARCはほとんど求心力を持たない組織でよいと思いま
す。求心力の強い組織は家族や地域共同体で充分です。日本人の多くはさらに職場と
いうきわめて求心力の強い組織に所属しています。求心力はこれ以上必要ありません。
したがって、NARC全体として活動計画をたて、人員を配置し、予算を確保して一定の
目標を達成するということは考えません。NGO登録やNPO法人化もしないつもりです。
会員が相互に情報や意見を交換して、誰かが何かおもしろいことができそうだと考え
れば、単独で、あるいはそれに興味をもった人が集まって活動します。

重要なことは、何らかの形で会員相互が絶えず意見や情報を交換し続けることだと思
います。情報交換の手段として、人と人が直接顔を合わせる現場視察や勉強会や茶話
会は最も有効なものだと思いますので、これからおおいにそのような場を設けたいも
のです。電話はかなり押しつけがましい性格をもっているので利用価値はあまり高く
ありません。書き物や印刷物などの郵便による交換は時間的にゆったりしていて、多
いに利用すべきものと考えます。IT技術にあまり依存したくない気持ちはあるのです
が、利用できるものは使わなければ損ですから、電子メールはおおいに活用したいと
思います。ホームページを設けることも必要ですね。そのようなネットワークには代
表はいりませんが、世話人のような者はいりますので、世話人グループがそれをやり
たいと考えています。



ラオス点描---モン族の正月---

モン(Hmong)族はいろいろな意味でラオスに住むたくさんの少数民族のなかで
もっとも存在感のある民族です。総数は約27万人と推定され、ラオス人口の5%程度
を占めています。民族学的には多数民族のラオ族とは異なった系統に属していて、
ラオス語とはまったく異なった言葉を話します。中国、ベトナム、タイ、ミャンマー
にも住んでいます。

内戦当時かなりのモン族はアメリカCIAの謀略で、左派のパテトラオ軍と戦いました。
CIAはモン族にケシを栽培させ阿片の販売代金で戦費を調達させたといわれています。
パテトラオが勝利し、米軍が多くの不発弾や枯れ葉剤汚染を残してインドシナ半島か
ら逃げ出したあと、当然のことながらモン族はパテトラオを中心とするラオス新政府
に厳しく弾圧されました。その結果多くのモン族がタイやアメリカに難民として逃れ
ました。

アメリカに逃れた難民は3級市民扱いされながら農業労働などで生計を立てているよう
ですが、皮肉なことにそれら難民は現金収入という面では一般のラオス人に比べては
るかに裕福になりました。彼らはラオス国内の親戚に送金しますから、モン族は、
現金をあまり必要としない自給的経済の中で暮らしているラオス農山村民のなかでは
金回りが良いグループを形成しています。

モン族は12月か1月に正月を盛大に祝います。アメリカで暮らしている親戚がたくさ
ん帰国するので、ヴィエンチャン空港の到着ロビーはモン族の出迎えでにぎわいます。
正月が終わるとこれらの人達がアメリカに帰るので、たくさんの集団が出発ロビーで
泣きの涙で別れを惜しみます。正月には若い女性が競って色彩豊かな民族衣装を着て、
モン族の村はお祭り気分一色に染まります。都会に近い村では広場に露店がたくさん
集まり、小さな回転木馬なども登場します。正月のハイライトは、若い男女が結婚相
手を見つけるためにするまり投げ遊びです。男女がそれぞれ一列になって向かい合い、
まり(最近はもっぱらテニスボール)を投げ合います。まり投げをしながらしゃべっ
たり見つめ合ったりして、そのうちに気に入った相手を見つけようと、相手を替えな
がら延々とまりを投げ合います。


若い男女のまり投げ遊び
ヴィエンチャン県ポンケオ村

着飾った少女
ヴィエンチャン県ナムニャム村


NARC勉強会

10月10日にジェンダー研究部会の勉強会を轄総ロ水産技術開発で開きました。前回に引
き続き
Townsley, P. 1993. A Manual on Rapid Appraisal Methods for Coastal Communities.
Bay of Bengal Programme. 109p.
を読みながら議論し、そのあと足立久美子さんがラオスでの養殖ジェンダー調査の結果
を発表し、それに関連づけて「自給的養殖はいかなる条件下で持続的たり得るか」とい
うテーマについて雑談形式で考えを出し合いました。出席者は9名でした。

Rapid Appraisal(RA)についての議論
RAにおけるsemi-structured interviewと視覚化手法のうちの地図作りに関する部分を読
みながら次のような点が議論されました。
(1)調査対象地域について有益な情報を得るためには、「官製」グループだけではなく
「自然」あるいは「自発的」なグループに対するsemi-structured interviewを行う必要
があるが、通常の調査(とくにJICAプロジェクトにおける調査)ではそのような「自然」、
「自発的」グループを相手にすることはほとんどない。これは相手国の事情にもよる。
途上国の中央あるい地方行政機関は外部の人間が勝手に村や共同体に入っていくことを
警戒するので、多くの場合「官製」グループしか相手にすることができない。

(2)グループに対するインタビューでは、活発に発言する者がいて議論をリードしてしま
う場合が多いが、多様な情報を得るためにはなるべくいろいろな参加者に発言してもらう
必要がある。多数の参加者が発言できるように、集会をうまく運営する技術を身につけな
ければならない。

(3)地域住民の考え方やものの見方を知るために村の地図を描かせることは有効な手段で
あるが、経験のない人々にとって地図を描くことは非常に難しいことである。情報をたく
さん得るためにはできるだけ外部から口をはさまないようにしなければならないが、傍
観しているだけでは地図はできない。どこまで干渉してよいかが非常に難しい問題である。

自給的養殖に関する議論
(1)養殖をやるときに現金収入に重きをおくか、魚の自給に重きをおくかは、他にどのよ
うな食糧生産手段や現金収入源があるかにかかわる。ラオスでごくおおざっぱな傾向を
見ると、温暖で水源が豊富で比較的平坦地が多い南部は、現金収入向け養殖の条件があ
るにもかかわらず自給的養殖が多く、反対に寒冷で水資源も限られていて山岳地が多い
北部では、条件に恵まれていないにもかかわらず現金収入向け養殖への関心が強いよう
である。

(2)零細農民は養殖を始める際に自給目的か現金収入目的かをはっきりと区別していない
のではないか。魚が簡単に食べられれば良いし、そのうえ現金収入が少しでも入ればよ
いと考えて始めるのだろう。しかし、たいていの場合は思うように現金収入が入らない
ので、結果的に自給的養殖になってしまう。
(3)自給的養殖においては魚種の選択が非常に重要である。飼い易さ、成長、食性等の点
から見てテラピア・ニロチカ(Oreochromis niloticus)が最も適した魚種である。
この魚種は体長5センチ以上になると植物プランクトンを食べて成長するが、それより小
さい時期は雑食性で動物プランクトンを食べないと良く成長しない。食性の変化に合わせ
た飼育方法が必要である。

足立さんのラオスジェンダー調査報告
私は今年の5-9月に、JICAの技術協力プロジェクト「ラオス養殖改善普及計画」の養殖ジェ
ンダーに関する短期専門家としていろいろな調査をしてきました。今回は、(1) プロジェ
クトの活動として行った家計簿記入活動と、(2) 個人的に行った農民に対する稚魚提供に
ついて報告します。

(1) 家計簿記入活動
首都ヴィエンチャン近郊の養魚農家5軒で家計簿をつけてもらいました。なぜ家計簿か、養
殖普及活動をするためには農家がどうやって養殖をしているかという情報が必要ですが、
普通の農家は養殖日誌をつけていません。そこで、記録をつけてもらうための手段として
家計簿を取り入れました。村落で行われている養殖は、毎日きちんと投餌や管理をすると
いうものではありません。たまたまお金があるときには配合飼料を買って餌を与え、また
シロアリ等の天然餌料が手に入ったときに餌を与えるといった状況で、ほとんどの日は何
もしません。何もしないので養殖日誌に何も書かないということが続くと「記録」をつけ
る習慣がさらになくなってしまいます。

一方、農家でも毎日動くものは「お金」です。直接養殖と関係ないようですが、お金の動
きから養殖の動きも分るのではないかということで、家計簿をつけてもらいました。儲かっ
ている養魚農家のお金の動きを見れば、どうしたら養殖がうまくいく可能性があるかとい
うことを他の農家へ示すことができます。ラオスの村落における過去の調査から、女性が
お金の管理をしていることが多いということと、女性の方が男性よりマメであるということ
から、女性に記入してもらおうと考えました。

いくつかの養魚農家の6-7月、7-8月における養殖活動を家計簿をもとにみてみます。
ある農家は自宅で種苗生産をしているので、種苗購入の費用はほとんどありません。支出の
ほとんどが資材費(餌、ビニール袋等)です。別の養魚農家は、母と娘3人が養殖に従事して
いました。ここは種苗生産をせず、稚魚の中間育成をしています。機材費への投入が少な
いので支出はほとんどが稚魚購入費でした。養殖農家の人達は売上げをそのまま利益と考
えてしまい、生産コストがいくらかかったかは気にしないのですが、家計簿のデータをグ
ラフにして見せたところ、改めて自分達の経営状況を確認し、納得していました。養殖振
興は食糧の安定確保と収入向上の両方を目的にしていますが、養殖によって利益をあげら
れることがはっきりわかれば、より広く普及することができます。記録をつけることから、
養殖の有効性についての認識が深まり、養殖振興が軌道に乗って行きそうな予感がしました。

(2) 稚魚の提供
ヴィエンチャン県に位置するモン族の村ナムニャム村の養魚農家のチョンチャオさんへソ
ウギョの稚魚400尾を提供しました。単に物をあげるというのではなく、こちらから稚魚を
配布し、彼からは情報を提供してもらうということを目的に始めました。彼は村ではもっと
も精力的に養殖活動をしており、池を5つ?(正確に確認できませんでした)持っています。
そのうちの3池にソウギョを放しました。

1つの池がある場所は深い森の中で、道無き道を鉈で草木を倒しながら進んで行きました。
歩くことおよそ20分、そこは彼が自然の川に堰を作り池にしたところで、池の中は木が生え
ているし天然の肉食魚ライギョが泳いでいました。そこへ体長5cmにも満たないソウギョを
放しました。チョンチャオさんはモン族なのでラオス語の読み書きがあまり得意ではありま
せんが、餌や漁獲などに関する養殖記録をつけることを約束してくれました。このソウギョ
が今後どのように利用されるのか?食用サイズに育つのか、またはライギョの餌になってし
まうのか、今のところはわかりません。ですが、彼がつけるであろう記録から、粗放的養殖
に対する支援の方法がわかってくるのではないかと期待しています。

彼と村長は「この村の魚は自分たちでまかなう」という夢を熱<く語ってくれました。彼らは、
「一日に10kgの魚があれば村人への供給量として充分である」と考えています。そのために
協力できることは何か、得られた情報から真剣に考えていこうと思っています。

余談ですが、チョンチャオさんは全部で14人の子供がいるお父さんです。お母さんはもちろん
1人で14人を産んだそうです。しかし、よくよく話を聞くと、「子供2人をすでに無くしている」
と言ったのです。そうすると、合計16人は産んだことになります。でもとてもそんなに子供を
産んだとは思えない若さと元気さです。次回ラオスを訪問したときに、記録がどうなっている
か確認してきます。



ラオスへの古着送付記録(前号の続き)

発送年月日重量
9平成15年 10月14日7.695kg
10平成15年 10月21日6.990kg
累計73.280kg