NARC通信 第5号

NARC通信 第4号

平成15年12月11日発行

  

第1回ラオス体験ツアー

第1回ラオス体験ツアーを平成15年11月18日から26日までの日程で実施しました。
参加者は野村チエ子さん、田井中勝次さん、長尾尚志・雅美さんご夫妻、池ノ上絹子
さん、それに世話人池ノ上宏の6名でした。

11月19日
朝9時頃ヴィエンチャン着。空港でJICA養殖改善普及プロジェクトの森本直樹チーフア
ドバイザー、伊藤将宏調整員、それに茶木博之専門家の奥さん、NARC現地研修員の
ボリチャンさんとメンタオ君の出迎えを受けました。森本さんと茶木さんが自家用車
を空港にまわしてホテルまで送ってくれました。ホテルにチェックインして一休みし
たあと、ボリチャンさんの案内でトクトクに乗って、モーニング・マーケット、タート・
ルアン(黄金のパゴダ)、パトゥーサイ(凱旋門)などを見物。昼食はラオス料理。も
ち米につけるピリ辛みそ(チェオ)はとくに好評でした。

夜はJICA養殖プロジェクトが実施されているナムスワン養殖開発センター(NADC)のチャ
ンタブン所長が自宅で盛大な歓迎パーティーを開いてくれました。バーシーの儀式
NARC通信第3号参照)あり、ラオラオ(もち米から作った焼酎)のまわし飲み
やカエルの塩焼きあり、恒例のラムウオンダンス(男女が輪になって踊る民族ダンス)
ありで、はやくもどっぷりとラオスの雰囲気につかりました。

11月20日
NADCを訪問しJICA養殖プロジェクトの現状を視察して技術協力の目的、活動、将来など
について理解を深めてもらいました。その後ヴィエンチャン市から90キロ北にあるナム
グム・ダムを見物し、ダム湖畔のレストランでテラピアの唐揚げやスッポンのスープを
楽しみました。ヴィエンチャン市内で生鮮食料品を売るノンニェオ市場とトンカンカム
市場を見物し、水産物の流通について見てもらいました。夜はラオス畜水産局のシンカ
ム局長が歓迎の夕食会を開いてくれました。

11月21日
早朝、空路で南部ラオス、チャンパサック県の県都パクセーに移動。ボリチャンさんも
通訳として同行です。彼女は22歳になる今までヴィエンチャン市から外にでたことはほ
とんどなく、飛行機に乗るのもはじめてなので、お母さんのヌーハクさん(NADC職員)
が心配して空港まできて搭乗手続きなどを教えていました。パクセー空港にガイドとミ
ニバスが待っていました。東京から電子メールのやりとりだけで予約したので不安でし
たがうまくいきました。市内で朝食のフー(米の麺に野菜、牛肉などを入れた汁そば)
を食べ、メコン川に沿って国道13号線を南下。

やがて国道から西に折れ、メコン川を小さなカーフェリーで対岸に渡って、世界遺産の
ワット・プーを見物しました。これはクメール系の人々がアンコールワットに先立って
建てた壮大なヒンズー寺院で、アジア文化史では非常に重要な遺跡です。頂上がリンガ
の形をした聖なる山の斜面に広がる遺跡からはるかメコン川を見下ろす眺めは、6-12世
紀に寺院を建てた人々が眺めた景色とあまり変わってないのではないでしょうか。メコ
ン川の東岸に戻り、フアイトモの小さなクメール文化遺跡を見たあと、カンボジア国境
近くまで南下し、コン・パペンの大瀑布を見物。カンボジア国境の集落でカンボジア製
の布などを買い、沈みかける太陽を見ながらメコン川の中洲コーン(Khong)島に渡りゲ
ストハウスに投宿。

11月22日
朝、ゲストハウス近くのラオラオを作っている農家を訪問。ラオラオの蒸留は朝早くやっ
てしまい火を落としたあとだったでので、残念ながらドラム缶の蒸留装置からラオラオ
がチョロチョロと流れ出るところは見られませんでした。できたてのラオラオをお猪口
で一杯ずつ味見して全員が一瓶づつ買いました。ボートをやといメコン川を1時間ほど
下り、コン(Khon)島に上陸。農業用のトラクターを改造した乗合自動車で、20世紀初
期にフランス人がもってきた蒸気機関車の残骸、リピーの滝、ソンパミットの滝を見物。

再び船に乗ってメコン川を少し遡り、東岸に上陸して13号線を北上。パクセー市へ50kmの
地点で右折しキャトゴン村に至りました。この村で象をやとい、往復1時間半象に揺られ
て謎に包まれたプーアサの遺跡を見物。象は象使いも含めて3人を乗せ、ゆうゆうと急な
斜面を上り下りしました。再び13号線を北上し、農家で高機による機織りを見て、夕方パ
クセー市に到着しゲストハウス(1泊7ドルで冷房、温水シャワー付き)に投宿。

11月23日
ゲストハウス近くの竹細工屋で筌(うけ:竹製の漁具、NARC通信第2号参照)の飾り物や
もち米を入れる弁当箱などを買い、ボロベン高原に向けて出発。クメール系の少数民族
カトゥー族やゲー族の村をたずねてビーズを織り込んだきれいな布を買ったり、タイの
観光会社が開発しているリゾートを見物。チャンパサック県政府が整備を進めているク
メール系少数民族の民家などを集めた展示村では、竹で作った素朴な楽器や笛などを手
作りして展示即売しているカトゥー族のおじいさんから、いくつかおもしろい楽器を買
いました。昼にはタート・ロー滝のほとりに作られたゲストホウスに到着し、午後はの
んびりと散歩や読書をして今までの強行軍の疲れをいやしました。

11月24日
ボロベン高原のコーヒー園、茶園を見物。ポンマア村というクメール系アラク族の村を
たずね、おばあさんが腰機で美しい布を織っているところを見せてもらいました。タート
ファンという美しい滝を見ながらコーヒーを飲み、昼頃パクセー市へ。市場の屋台で焼き
鶏、タム・マク・ホーン(パパイヤのサラダ)、ソーセージなどの昼食をとり、タイ国境
へ向かいました。国境の市場を見物してタイに入りミニバスを借り上げて、東北タイの
都会ウボンラチャタニに到着。

11月25日
空路バンコクへ。タイ料理、貸し切り船をやとってのチャオプラヤ川水路網の見物、買い
物などと忙しく動き回りました。
かなりの強行軍だったにもかかわらず、落伍者もなく和気あいあいと楽しい旅行をする
ことができました。忙しいなか暖かく歓迎してくださった森本直樹さんはじめJICA養殖
プロジェクト日本人専門家の皆さん、チャンタブン所長はじめナムスワン養殖開発セン
ターの皆さん、シンカム局長はじめラオス畜水産局の皆さん、そして一生懸命慣れない
通訳をしてくれたボリチャンさんに感謝します。そして何よりも、この旅行の趣旨を理
解してくださり、いろいろ行き届かない点があった世話人に文句も言わずに付き合って
くださった5名の参加者の皆さんに心から感謝いたします。

旅行団の皆さん
ワット・プーにて

ラオス料理の昼食
ワット・プー近くの村にて


NARC勉強会

12月4日にジェンダー研究部会の勉強会を轄総ロ水産技術開発で開きました。前回に引
き続き
Townsley, P. 1993. A Manual on Rapid Appraisal Methods for Coastal Communities.
Bay of Bengal Programme. 109p.
を読みながら議論し、そのあと池ノ上がラオス体験ツアーの報告をしました。出席者は4名
でした。ラオスの農山村でボランティアとして現地調査の経験を積んだ小川道夫さんが
参加したことで議論に厚みがでました。

Rapid Appraisal(RA)についての感想
マニュアルを読み進みながら、個々の調査手法を現場で使いこなすことの難しさを考える
と同時に、このような調査手法を必要とする先進国の人間(あるいは彼らと働く途上国の
"進んだ"人間)と調査をされる途上国の人間の間の関係について考え込んでしまいます。
このような手法は、地域における問題の発掘とその解決を、いかに現地住民の声を尊重し
彼らの参画を促しながら進めるかということを目的に考え出されたものです。そこに調査
する側の相当な善意が存在することに疑問の余地はありません。

しかしその根本に、必要な情報をいかに短期間に最小のコストで効率的に集めるのかとい
う調査する側の要求が潜んでいることもたしかです。そこでは、調査で得られない情報は
存在しないものとして無視する、得られた情報は軽重をつけて選別するということを通じ
て、現地の状況を単純化して理解するということが必ず行われます。これは実施する時間
と投入する資源が決められているプロジェクトという活動では不可避のことです。

それは村落開発であろうと、ある地域の武力による制圧であろうと、根本的には同じです。
イラクやアフガニスタンにおけるアメリカの軍事行動も効率的な情報収集とそれに基づく
現地状況の単純化された理解にもとづいて行われています。そしてそこでは米軍の誤爆に
よる住民の殺戮が繰り返されています。目的も出発点も結果もまったく異なるものですが、
プロジェクトという方式による村落開発が、米軍の軍事行動と同根の性格をもっていると
いうことは肝に銘じておかねばならないと思います(文責:池ノ上)