NARC通信 第6号

NARC通信 第6号

平成16年3月31日発行

  

ラオスからのお客さんの歓迎会

NARC通信」第5号で報告したラオス体験旅行の際に、旅行団一行をビエンチャン
の自宅に呼んで盛大な歓迎パーティーを開いてくれた、ナムスワン養殖開発センター
のチャンタブン所長がJICAの「持続的養殖開発」研修コースの研修員として3月16日に
来日しました。そこで旅行団の田井中さん、長尾さん、野村さんそれに池ノ上の4人で
チャンタブンさんの歓迎会を3月26日に彼の宿泊先のある幡ヶ谷の居酒屋で行いました。
ラオスの思い出話に花を咲かせて大いに盛り上がりました。チャンタブンさんは7月の
半ばまで日本に滞在します。



ラオス点描---焼畑---

ラオスでは焼畑農業が重要な食糧生産手段です。大きな河川に沿った平坦地以外
ではどこでも焼畑が行われています。乾期に斜面の草木を切り倒して乾燥させ、乾燥
したら火を入れて燃やし、雨期にはいると灰を肥料にして米、トウモロコシ、キャッ
サバなどを植え付ける農業です。

先進国の環境保護をとなえる人々は焼畑は森林破壊を引き起こすから止めさせるべき
だといっています。しかし、徹底的に森林を破壊して都市や農地を作り経済発展を遂
げてきた先進国に本来そのようなことをいう資格はないはずです。たしかに焼畑は類
焼によって焼畑地以外の森林を燃やしてしまうことがあるようです。それに人口が増
加すると一人あたりの焼畑に使える土地が少なくなり、休耕期間が短くなっていって、
しまいには土地が荒廃して生産性のない雑草地になってしまうこともあるようです。
そのため、野放図に焼畑を続けていると、焼畑に依存している人々が自らの首を絞め
るような結果になってしまうことが予想されます。焼畑にもある程度の管理が必要な
ことはたしかです。

焼畑は非常に原始的な耕作で技も知恵も関係ないように考えられがちです。ラオス政
府がビエンチャン近郊の焼畑を禁止しようとしているのは、そういった原始的な農業
が大規模に行われているのを恥ずかしく思っているからかもしれません。しかし、実
際はかなり高度の技と知恵を要するものではないかと思います。まず焼畑を行う斜面
を選ぶ目が必要です。草木を切り倒して乾燥させ、火入れし、種を蒔くには天候を予
想する能力が必要です。焼畑は害獣の進入を防ぐために垣根で囲いますが、広大な土
地をきちんと垣根で囲うにはかなりの技が必要です。

焼畑は生産性が低いから止めるべきだという考えもあります。たしかに1ヘクタール当
たり1.5トンくらいしか米ができないといわれており、これは水田に比べると非常に低
い生産です。しかし、水田や畑にならないような急斜面を食糧生産に有効利用するに
は優れた方法といえます。それに肥料や農薬は使いませんから安全な食糧が生産され
ます。人口が少なく山地が多いラオスのような国に適した農法といえるでしょう。

焼畑を止めさせるための方策を考えるという方向ばかりで開発や研究が進められてい
るようですが、そうではなく、健全な焼畑を育成するという方向での研究開発が行わ
れるべきだと思います。


焼畑と養殖池
ルアンパバーン県


NARC勉強会

1月22日と3月25日にジェンダー研究グループの勉強会を轄総ロ水産技術開発で開きました。
引き続き
Townsley, P. 1993. A Manual on Rapid Appraisal Methods for Coastal Communities.
Bay of Bengal Programme. 109p.
を輪読しました。出席者は1月が9名、3月が8名でした。

Rapid Appraisal(RA)についての議論
Transect walking、Mapping、Seasonal calendar, Venn diagram、Rankingなどのテク
ニックについて、実際に自分が東南アジアや南太平洋の農山漁村で村人達と一緒にプロ
ジェクト形成をしようとしているところを想像しながら議論しました。そのなかで次の
ような点が議論になりました。

(1) 時間の制約と言葉の障壁がある中で、これらのテクニックを充分に使って村人達の
考えを引き出すことがはたして可能だろうか。どうしても調査者である自分があらかじ
め想定した情報を得る方向に村人を誘導してしまうことになってしまうのではないだろうか。

(2) 村人になぜこのような手法を使って調査をするのかということをわかってもらうこ
とが重要であるが、どうやったらそのようなことが可能だろうか。

(3) 村人がこのような手法を使った調査に時間を割いて参加するモチベーションは何だろうか。

ベトナム・メコンデルタの複合農業における養殖(太平さんの報告)
東京大学大学院国際水産開発研究室の大平智恵さんが、昨年7月(「NARC通信」第2号で報告)
に続いて11、12月にベトナムで現地調査を行い、その結果を報告してくれました。概要
は次の通りです。

メコンデルタでは米価の低迷により稲作の収益性が低下しており、それに対処するため、
農業の多様化をすすめています。その一環として複合農業の普及に力が入れられています。
複合農業とは、稲作を中心に、稲作副産物の糠で豚を飼い、豚の糞尿で堆肥をつくって
養殖池や野菜畑や果樹園に施肥して、農業副産物の経営体内循環による環境保全ととも
に農業所得向上をはかろうというものです。複合農業の実態を把握するために、メコン
デルタに位置するビンロン県、タムビン郡、マイロック村で質問表によるインタビュー
調査を行いました。

この村は人口が9,027人、世帯数が1,823世帯で、このうち農業従事者数が5,357人、農業
世帯数が1,628世帯です。主な農産物は米、オレンジ、豚です。データが得られた110世
帯のうち79世帯は複合農業を行っていました。そして、そのうちのほとんどは養殖を組
み込んだ複合農業を行っています。複合農業における養殖の特徴は次のとおりです。

(1) 全現金収入のうち養殖による収入は10% 程度。

(2) 養殖生産物の販売は、大部分の農家では生産量の10%以下で、ほとんどは自家消費さ
れている。

(3) 養殖に投入する労働力は稲作、畜産、果樹栽培などに比べて非常に少なく、農業全
体に投入された総家族労働力の4%。

(4) 養殖における技術的な問題としては、不充分な水管理による魚病の発生が一番大き
な問題として指摘された。

JICA「漁村開発におけるジェンダー」セミナーをふりかえって
JICAが今年の2月から3月にかけて行った「漁村開発におけるジェンダー」セミナーにい
ろいろな形で参画した体験をもとにして、このセミナー(研修)の問題点について話し
合いました。主として2つの点が議論されました。ひとつはセミナー参加者のジェンダー
についての関心や、出身国によるジェンダー状況が非常に大きく異なるということをよ
く認識する必要があるということです。この点に関して次のような点が指摘されました。

(1) 東南アジアの仏教国は女性の社会進出が進んでいて経済的地位が高いため、ジェン
ダーが差し迫った問題としては捉えられないのではないか。

(2) 南アジアのとくにイスラム国では女性の地位が非常に低く、女性の生命、財産が脅
かされるような状況もあり、ジェンダー配慮が緊急課題となっている。

(3) しかし、東南アジアでも南アジアでも女性が国家元首となりうるという点では、日
本より女性の社会的地位が高いとも考えられる。教育問題にしろ医療保健問題にしろ、
ジェンダーの問題というより貧困に起因する現象が多いのではないか。

(4) 東アジアでは少子化がすすむなかで男子を欲しがる傾向が強い(とくに中国では)
ため、女子の出生が相対的に少なくなり、男女の比率にゆがみが生じつつある。この問
題はジェンダーの課題として取り上げられるべきではないか。

もうひとつは、セミナー(研修)の講義や行事が多すぎて、ただでさえめまぐるしい日
本での生活のなかで、参加者は強いストレスを与えられているだけではなく、セミナー
中に学んだことを十分に咀嚼する余裕もないのではないかという点について議論がなさ
れました。この点については、

(1) 講義や行事の数を減らして、討論や現場視察の時間を増やしたり、1回の講義時間を
短くしたりして余裕を持った時間割にする必要がある。

という意見と、

(2) むしろそのようにめまぐるしくストレスに満ちた日本の社会を見たり体験したりして
もらうことも、途上国の人々を日本に呼んで研修することの意義の一つなのではないかと
いう意見が出されました。